秋の夕方、草むらから声がするのに、虫の姿は見つからない。そんなときは、音を残してみましょう。手持ちのスマートフォンで短く録音し、日付・時刻・場所・聞こえ方を一緒に書けば、虫の声の自由研究を始められます。
名前がすぐに分からなくても構いません。「同じ音が何度も続く」「少し鳴いて休む」など、聞き取れた特徴から調べます。録音を繰り返し聞けるので、その場で全部覚える必要もありません。
最初は「同じ場所で、どんな音が聞こえる?」を調べる
初めてなら、一つの場所で聞こえる音の特徴をまとめてみましょう。「同じ長さの録音の中に、短く区切れる音と長く続く音があるか」など、比べたいことを一つ決めます。
コオロギやスズムシなどは、翅をすり合わせて音を出します。千葉県の家庭学習資料でも、姿が見つからない場合に鳴き声を記録する方法が紹介されています。口で歌っているように想像しがちですが、音の出し方にも興味を広げられます。
幼児なら「どんなふうに聞こえた?」と音をまねする遊びから。小学生なら録音時間や繰り返しを記録し、高学年は条件をそろえて別の日と比べる方法に進めます。
道具はスマホ・メモ・鉛筆からで十分
録音機能が使えるスマートフォンとメモがあれば始められます。機種によって操作は違うので、家で録音・停止・再生を一度試し、音が保存される場所を確かめてください。専用の集音マイクや有料アプリを最初からそろえる必要はありません。
場所は、自宅の庭や、明るいうちに安全を確認した観察可能な場所を選びます。子どもだけで夜に探しに行かず、音を追って藪、車道、水辺へ近づかないことが大切です。園の開閉時間や立ち入りのルールを優先し、暗くなる前に切り上げても観察できます。
外では周囲の音が聞こえる状態を保ち、イヤホンを付けて歩かないようにしましょう。聞き比べは、帰宅してから落ち着いて行えます。
録音は短く試し、同じ条件で残す
- 安全な場所で立ち止まり、何も話さず音に耳を澄ます。
- スマートフォンのマイクを指やケースで塞いでいないか確認する。
- まず10秒ほど試しに録り、虫の音が入っているか再生して確かめる。
- 本番は30秒など長さを決め、向きや持つ高さを大きく変えずに録音する。
- 録音が終わってから、ファイル名、時刻、場所、聞こえ方をメモする。
10秒や30秒は、親子で始めやすくするための例です。長く録ることより、音と記録が対応していることを大切にしてください。比べる回は、同じ機器・アプリ・設定と同じ録音時間にそろえます。
録音中に「今鳴いた!」と話すと、その声も入ります。音声によるメモを残したいなら、虫の録音を止めた後に別ファイルで残すと、後から聞き分けやすくなります。
風や車の音が入ったら、どうする?
表は横にスクロールできます。キーボードでは表を選んで左右キーで移動できます。
| 困ったこと | まず試すこと | 記録に残すこと |
|---|---|---|
| 風の音が大きい | 安全な範囲で風を受けにくい向きにする。強風なら別日にする | 風があったこと、向きを変えたこと |
| 車や話し声が重なる | 音が落ち着いた後、別のファイルで録り直す | どの区間が聞き取りにくいか |
| 虫の音が小さい | マイクの位置を確認し、その場で短く再生する | 姿や距離が分からない場合は未確認と書く |
| 音が途切れた | そのまま少し待つ。追いかけたり草を揺らしたりしない | 途中から聞こえなくなったこと |
最初の録音は消さずに残しましょう。雑音の少ないファイルだけを選ぶ場合も、「車が通った録音を除いた」など、選んだ理由を説明できます。雑音を減らす編集を試すなら、元の音声を別に保存し、加工したものと分かる名前にします。
聞こえなかった回は、「この場所に虫がいなかった」という証拠にはなりません。鳴いていない、遠い、別の音に隠れている、機器でうまく録れていない、といった可能性も残ります。
ファイル名と観察メモを一組にする
下の表は架空の記入例です。実際の虫の種類や観察結果を示したものではありません。
表は横にスクロールできます。キーボードでは表を選んで左右キーで移動できます。
| 記録項目 | 仮の記入例 |
|---|---|
| ファイル名 | 10月○日・庭・1回目 |
| 時刻と長さ | 17:00から30秒 |
| 録った場所 | 庭の通路。草の方へ向けた |
| 音の特徴 | 短い音が続く。途中で少し休む |
| 気づいたこと | 後半に車の音。虫の姿は未確認 |
温度計で測っていないなら、その場所の気温を推測の数字で書かなくて大丈夫です。天気予報の地域の気温を使う場合も、自分が現地で測った値とは分けて書きます。
録音を公開する予定があるなら、人の会話や家が特定できる情報が入っていないか、大人と確認してください。研究発表にも、正確な自宅住所や、珍しい虫の細かい生息場所を載せる必要はありません。虫の観察場所を共有するときの考え方も参考になります。
鳴き声の名前が分からないときは、参考音源と比べる
まず、自分にはどう聞こえたかを言葉にします。「リリリ」「チン、チン」のような表現に加えて、長く続くか、間があくか、地面側か木の上か、といった特徴も記録しましょう。
兵庫県立人と自然の博物館の鳴き声当てクイズには、身近な虫の音を聞く入口があります。参考音源と似ていても、録音が不鮮明なら「○○に似た声、種類は未確認」としておけます。参照したページ名と日付も残してください。
何種類もの声が重なることもあります。森林総合研究所のアオマツムシの解説では、大きな声がほかの虫の声を聞こえにくくすることも説明されています。一つの録音から、鳴いている虫の種類数や匹数を正確に数えられるとは限りません。
音声が増えてきたら、小さな記録ノートを添える
録音だけをためると、「これはどこで聞いた音だったかな」と迷うことがあります。スマホのメモ機能でも整理できますが、親が録音し、子どもが紙に書く分担なら、小さなノートが使いやすい選択肢です。
コクヨの測量野帳スケッチブックは、外寸約165×95×6mmの硬い表紙で、3mm方眼・40枚。長い報告文より、ファイル名・時刻・聞こえ方を短く書き留める用途に向いています。録音機能や防水性はないため、音声はスマホに保存し、ノートは濡れないように持ち歩きます。
「録った音と、その場で気づいたことをセットで残したい」なら、散歩用の1冊を決めると後の聞き比べがしやすくなります。下のリンクでサイズと単冊・セットの違いを確かめてください。記録の項目は、昆虫観察ノートのテンプレートを音の観察に合わせて使えます。
録音ファイルと、聞いた場所を一緒に残す
音声が増えて「いつ、どこで録ったか分からない」となりそうなら、コクヨの測量野帳スケッチブックにファイル名・時刻・音の特徴を残す方法があります。小さな硬い表紙で、スマホと別に短くメモできます。防水ではないため、雨の日の使い方とサイズを確かめて選んでください。
おすすめの理由: 硬い表紙で、机のない園路でも時刻と変化を短く書き留めやすい小型の3mm方眼ノートです。
選ぶときに見る所: セ-Y3・40枚・3mm方眼を確認。大きな写真を貼る用途には小さく、防水紙ではありません。
まとめは音の特徴を中心に。音量だけで結論を出さない
同じ30秒の音声を比べるなら、「短い音が続く」「休む時間がある」など、聞き取れた特徴を並べます。回数を数える場合は、どこからどこまでを1回とするか、先に決めて方法に書きましょう。複数の声が重なって数えられないときは、無理に数字へ変えません。
スマホの波形が大きかったことだけで、虫が多い、近い、元気だとは判断できません。機器や録音設定、距離、周囲の音も関係するためです。結果と考察のまとめ方は、高学年向けの自由研究で詳しく説明しています。
11月に続ける場合は、地域やその日の暖かさによって聞こえる音が変わることを前提に、短く観察しましょう。聞こえなくなった後も、保存した録音を比べる研究は続けられます。11月の虫探し、12月の昆虫観察から、次の題材も探せます。
よくある質問
スマホだけで虫の声を録音できますか?
録音機能を使って始められます。まず短く試し、実際に虫の音が入るか再生して確認しましょう。機種や周囲の環境で録れ方が変わるため、専用マイクの購入は必要を確かめてから考えられます。
鳴き声だけで虫の種類が分かりますか?
手がかりにはなりますが、音が重なったり、録音が不鮮明だったりすると判断が難しいことがあります。音の特徴、時期、場所、姿の情報を合わせ、分からないものは未確認と残しましょう。
11月や冬でも、虫の声で自由研究ができますか?
野外で聞ける声は地域や気温、種類で変わります。聞こえることを前提に夜歩きせず、安全な範囲で確かめましょう。冬は、秋に保存した録音とメモを聞き比べてまとめる方法もあります。






