昆虫の触角は、においなど周りの情報を受け取る感覚器です。物に触れて、その位置や形を探る働きもあります。 顔の前でゆっくり動く細い二本は、飾りではありません。
葉の上で虫が立ち止まったとき、脚は動いていないのに触角だけが揺れていることがあります。「何をしているのかな」と気になったら、まずはその先を目で追ってみましょう。
触角は、においを感じる入口
私たちが鼻でにおいを感じるように、昆虫は触角でにおいの手がかりを受け取ります。目には見えない小さな物質を、触角にある受容体がとらえます。
東京大学先端科学技術研究センターの解説では、昆虫が触角の嗅覚受容体を使い、周囲の化学物質を検出すると説明されています。「嗅覚」は、においを感じる感覚のことです。
身近な例が、道に沿って歩くアリです。アリの仲間には、地面に残されたにおいの手がかりを触角でたどるものがいます。前の一匹を目で追うだけでなく、見えない情報も使っているのです。行列のしくみはアリはなぜ行列を作る?で詳しく紹介しています。
ただし、触角を動かしている虫を見つけても、「今、おいしいにおいをかいでいる」とまでは分かりません。何を感じ取っているのかと、外から見える動きとは分けて考えます。
コオロギは、触れて周りの物を探る
触角の働きは、においを感じることだけではありません。コオロギのように長い触角を動かし、周りの物に触れて情報を得る昆虫もいます。
北海道大学の研究では、触角が物に触れているコオロギが、障害物の位置や向きに応じて、ぶつからないよう逃げる進路を変えることが確認されました。触ったという反応だけでなく、周囲の配置に合わせた動きにつながっています。北海道大学の研究解説
暗い所で手を前へ伸ばし、物のある場所を探す様子を思い浮かべると、少し想像しやすくなります。触角が葉や枝に届くとき、虫は目で見る以外の手がかりも得ているかもしれません。
これはコオロギで調べられた働きの例です。すべての虫が同じように触角を使い、同じ進み方をする、という意味ではありません。
動く姿と、感じていることを分けてみよう
親子で見るときは、虫の気持ちを先に決めるより、「触角の先がどこにあるか」を言葉にしてみます。目の前で確かめられることから始めると、次に知りたいことも見つかります。
表は横にスクロールできます。キーボードでは表を選んで左右キーで移動できます。
| 見えたこと | まだ決められないこと |
|---|---|
| 触角を左右へ動かしている | どのにおいを感じているか |
| 触角の先が葉に触れた | 葉を食べようとしているか |
| 立ち止まってから進む向きを変えた | 触角からの情報だけで向きを変えたか |
「葉に触ったあと、こっちへ歩いたね」は見たこと。「葉の先を調べていたのかな」は考えたことです。両方を話して構いませんが、考えたことには「かな」を付けると、分かったつもりで終わらずに見続けられます。
においの働きを確かめようとして、虫へ香水やスプレーをかける必要はありません。触角をつまんだり、指で動かしたりせず、虫が自分で動くところを眺めます。
次に出会ったら、触角の先を少し追いかける
虫を見つけても、全部の体を一度に覚えなくて大丈夫です。今日は触角だけ。どちらへ向けたか、何かに触れたか、止まっている間にも動いたか。気になった一つを親子で見てみましょう。
細くて先が見えないときは、無理に顔を近づけず、見えるところまでで十分です。写真に残っていれば、家で大きくして見直す楽しみもあります。体に比べてどれくらい長いのか気になったら、バッタとキリギリスの触角の見比べ方へ進めます。
子どもが指を二本立てて、触角の動きをまねするのも遊びの一つです。「さっきはこっちを向いていたね」と動かしてみると、小さな動きをよく見ていたことに気づくかもしれません。次に虫と出会ったとき、今まで見過ごしていた二本が目に入ってきます。
昆虫の触角でよくある質問
触角は、においを感じるためだけにありますか?
においを感じるほか、物に触れて周囲を探る働きもあります。コオロギでは、触角で得た情報に応じて障害物を避ける進路を変えることが調べられています。働き方は昆虫の種類によっても違います。
触角を動かしていたら、食べ物を探していますか?
動きだけでは決められません。触角がどちらを向き、何に触れたかは観察できますが、今感じたにおいや、動いた理由までは外から見ただけでは分からないためです。
触角を触って確かめてもよいですか?
つまんだり引っ張ったりせず、虫自身が動かすところを見ましょう。見えた動きを親子で話したり、撮れた写真を見直したりするだけでも、触角に注目した観察を楽しめます。






